アンチエイジングコラム
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同志社大学教授 米井嘉一ドクター 同志社大学大学院 生命医科学研究科 アンチエイジングリサーチセンター/糖化ストレス研究センターhttp://www.yonei-labo.com/ |
抗糖化って知ってますか。
第2回
まず「糖化」を語る上で、糖尿病との関係を避けて通るわけにはいきません。
生体中の糖化反応については、1968年にヒトのヘモグロビン(酸素を運ぶたんぱく質)が、血液中のグルコースと反応して糖化することが発見されました。そのヘモグロビンは「ヘモグロビンA1c」と呼ばれ、糖尿病の代表的な検査「グリコヘモグロビン検査」の数値として知られています。糖尿病になるとこの値が上昇するのです。
恐ろしいのは、糖化と糖尿病合併症の関係です。糖尿病と診断されても自覚症状のない方がほとんどです。積極的な食事療法や運動療法も実践しない、もしくはできない人も少なくありません。糖尿病の患者さんは血中のグルコース濃度が高いので、糖化反応が起こりやすく、そのスピードがアップしてしまいます。そうすると糖尿病合併症を早々に引き起こしてしまうのです。気づかない間にジワジワと糖化が進み合併症が発症・進行してしまう・・・、これが恐ろしいところです。
現在、年間約4,000人の方が糖尿病網膜症によって高度の視力障害となり、糖尿病性腎症によって約14,000人が透析療法を受けています。糖尿病性神経障害によって年間約10,000人が下肢を切断、さらに糖尿病性血管障害によって、糖尿病患者の約40~50%が心筋梗塞や脳梗塞で亡くなっているというのが現状なのです。
これらの糖尿病合併症が悪化すればするほど、老化現象も拍車をかけて進みます。それは加齢による正常な老化とは違う「病的な老化」です。糖化は極端に早く「老ける人」を作ってしまうのです。
つまり、日本中に約2,200万人いる糖尿病予備軍もしくは糖尿病の方は、糖化を阻止し、アンチエイジングな生活習慣を実践することが、恐ろしい糖尿病合併症を予防することにもつながるのです。
また、最近はこの糖化と肌の老化についての関係性も徐々に明らかになってきました。今後の連載ではそのあたりのことについても随時触れていきたいと思います。
そして実は現在、私たちを取り巻く生活環境が、この糖化を促進させる要素にあふれていることもこれから徐々に説明していくとともに、その対応策についてもお話してくつもりです。
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第1回
早くに老化した人、病的に老化した人の病状を診たとき、その疾病の種類はさまざまですが、分子レベルで見たときに必ず「糖化」という反応が起こっています。酸化は「体がサビる」現象ですが、糖化はいわば「体がコゲる」かのような強いダメージを体に与えて、高齢者モードへのスイッチを早々と押してしまいます。
まずはじめに、糖化(メイラード反応)とは、たんぱく質や脂肪などが糖(グルコース)と反応して変性してしまうという反応を言います。
1912年にフランスの科学者L・C・メイラードが提唱したことから名づけられました。身近な例では、ホットケーキを焼いたときの反応がわかりやすいでしょう。牛乳や卵に砂糖を混ぜて焼くと、こんがりと褐色に変化し、おいしそうな香りを放ちますが、これがメイラード反応、つまり糖化です。砂糖を煮詰めたときの「カラメル化」も、醤油や味噌の風味をよくする反応も同様です。「こんがり」「よい香り」「風味を増す」と、食材に関してはメリットの多い反応ですが、これが私たちの体の中で起こってくるとなると、話は変わってきます。
また、最近はこの糖化と肌の老化についての関係性も徐々に明らかになってきました。今後の連載ではそのあたりのことについても随時触れていきたいと思います。
そして実は現在、私たちを取り巻く生活環境が、この糖化を促進させる要素にあふれていることもこれから徐々に説明していくとともに、その対応策についてもお話してくつもりです。